夢をみていた
目を覚ました瞬間
泡のように消える儚い夢なのに
いつまでも胸の奥が熱かった
これは懐かしさなの
それとも切なさなの
割り切れない気持ちを引きずったまま
新しい一日を迎える
カーテンを引いたような薄闇の朝が
それでもお早うと言っている
冷気の中 主人の後をついて足を引きずる
黄ばんだ毛色の大きな犬とすれ違う
その瞳は穏やかな光を湛えているけれど
竹箒の様に不細工で太い尻尾は
折れた耳と同じ様に垂れ
昔のようにピンと元気よく振られることも無く
大きな体を揺らす様に主人の後をゆっくりと歩んでいく
ねえ そういう事なんでしょう
見知らぬ瞳に向かって問いかけるが
彼は何も答えず
軽く足を引きずったまま立ち去って行くけれど
私は遠ざかるその背中に尚も問いかける
きっとそういうことなんだね
そして小さな優しい想いを君から貰うんだ
またひとつこうやって大切なものを
今日も一日貰っては過ごして行くんだ