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たった一つの月

月は地球から生まれたという、

マグマ渦巻く遥か彼方、激突から生じた星の欠片が

やがて時を経てゆっくりと地球を巡るもう一つの星となった


今は優しい顔を見せているこの月も

その昔は引力で何百メートルもの大津波を呼び起こし、

地上を我が物顔で操っていたと言う


『もしも月がなかったら』一日は8時間しかなかったそうな

地上は絶えず強風が吹き荒れ、植物は育ちにくく地べたを這い、

生き物には過酷過ぎて人類は誕生しなかったかもしれないと言う

生態系は大幅に変わっていたのかも知れない


月が存在しなかったら、

地球の、そして私達の運命は大きく変わっていたことだろう

あるべきものがそこに無いと言うだけで、

一つの歯車が狂うことで、全てが崩れ去ることがある


必要とされるもの、本当には必要とされないようで、

実は無いと本当の意味で困るもの、その存在の意味と価値

簡単なようで難しく、私は首を傾げてしまう


「もしも・・・」

唱えてみても仕方の無い呪文なのに

人々は「もしも」に捉われている

そうやって捉われながら毎日を言い訳をしたり、

自己嫌悪に陥ったりしながら地上にへり付いて生きている


けれど月はそんなことには微塵も捉われず頭上で輝き、

潮の満ち引きを起こし、満ち欠けを繰り返し、様々な表情を見せながら

私達の心に多様な感情を巻き起こしては渦を巻くように流し込んでいく


いつも私達の頭上を巡る月、

手の届かない遥か上空で輝き続ける月、

人の心に流れ込んでくる、白く青く透明な月

それぞれの人がそれぞれの心に自分だけの月を持っている


ある時はほんのりと温かく、時に冴え冴えと冷たく、そして哀しいくらいに寂しく

何千、何万、何億もの心に住む、いくつもの顔を持った、

けれどこの世にたった一つ、自分だけの愛しい月
by _kyo_kyo | 2005-07-24 01:57 | | Trackback
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