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遥かなる青の思い出

心に沁みる静かな青は

私を遠い過去へと誘う


空は青く眩しくて

日差しは蜜蜂や蟻や私にも

変わりなく優しかった

雲は白くほんわりと

心を乗せて何処までも

浮かんでは流れて行った


シャボン玉は何時もうまく膨らまず

だまになってぽたぽたと

雫となっては服を汚し母に良く叱られたものだった

稀にきれいに膨らむと

近所の犬や猫が追いかけては

鼻先でぱちんと弾けるので

驚いてクシュンとくしゃみをしていた


春の畑にはレンゲがいっぱいで、

ハコベや白爪草と一緒に摘んでは

親友と、毎年秘密の春のお祭りをしたのだっけ

あの秘密基地は今でもこの胸の中に


田んぼにはオタマジャクシがいっぱいで

タニシを取るおばさんや蛙の卵で遊ぶ子供で賑やかだった

夕暮れにいつまでも続く蛙の歌声は

ひんやりとした夜風と共に

やけに耳に心地良かった


時々思い出すのはひばりの鳴き声

田んぼの遠く上空を舞う姿と

きりきりと遥か上空より落下するその姿の美しさ


秋から冬へと急速に日は暮れ始め

いつもの帰り道、先を急ぐ母の背中を追いながら

少しでも目を離すと母がお化けになりそうで怖かった


家の中では裸電球が揺れて

影法師がゆらゆらと浮かんでは笑い

やっと点した小さなガスストーブは

青い火が一つだけぽっと揺らめいて

白い石綿の配線の中を小鬼のように

上から下へと踊っていたっけ


ベニヤの隙間から絶えず吹き込む冷たい風で

氷の様に薄い窓ガラスが

風でかたかたと鳴っていたある冬の夜のこと
by _kyo_kyo | 2005-12-08 05:54 | | Trackback
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