沢山の言葉を持っている訳ではない
こんこんと湧き出る清水のように
尽きることのない言葉が溢れてくる訳でもない
ほんの限られた選択肢と否定の中から
それは顔を覗かせつつ、時には縮こまり、蠢きながら
またある時には恐ろしく醜く、難解でもあり
なのに生まれたてのタマゴのように
驚く程つるんと無防備な姿で現れる
その訪れをただじっと待つ心は
ざわめく喧騒や木の葉震わす突風を避ける術を知らず
全てを真っ向から受け止めながら
小さな水溜まりに映る月の姿の揺らがぬよう願っている
降り続ける雨の気まぐれに惑わされ
最後の一滴まで滴る水滴を受け続ける花びらの
やがて耐え切れなくなった一瞬に
ほろりと綻びの様に落下する一滴が
そっと広げた掌に
まっしぐらに落ちて来るのを
ただ静かに待ち続けている