花火
去年の夏の初めにたんたんを亡くし、私はペットロスに陥ってしまった。
泣いてばかりいては彼が悲しむからと思うそばから新たな悲しみが押し寄せ、
その反面、自分勝手な悲しみにばかり捕われている己に自己嫌悪も感じていた。
彼が死んで、胸の中心に大きな穴が開いたみたいで、
何をしていてもいつもたんたんの姿が思われて仕方なかった。
その一方で、彼がいないのに今までの様に笑うことのできる自分もいて、
少しずつ彼との思い出が風化して行くであろう未来を思い、
そんな未来を許すであろう自分を薄情だとも感じていた。
一時は、あまりの苦しみから、私を置いていってしまったたんたんを酷いと思い、
庭で眠る躯は彼の抜け殻でしかなく、そういった「モノ」になんの意味もないと言うのに、
そこに固執しようとしている自分を見出しもした。
神なんて信じないし、死後の世界も信じないのに、
たんたんにいつか再び会いたいと切望し、
彼の無垢な魂の失われたと言う事実を認めたくはなかった。
時間を巻き戻せたならと、どんなに願ったことだろう。
ほんの数分前まで、私に抱っこをせびって甘えていたのに、
一瞬で命をむしり取られ物言わぬ躯となってしまった。
彼の体は土の下で今はきっと白い骨になったことだろう。
命の灯は尽きたけれど、たんたんの存在は私の中でずっと輝いている。