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スケッチ

懐かしい思い出だけが

からからと風車のように廻っている


熱いお茶を掌で包みこむように

唇に運んだ湯飲みは縁が欠けてしまった


母と共に時を歩んできた腕時計の竜頭も壊れ

もはやこれ以上の時を刻もうとはしない


通い慣れた店のシャッターは

ずっと閉ざされたまま雨に打たれ

ゆっくり時の中で風化して行く


かつて門の脇には

エンジや黄の小菊が咲き乱れ

だだ広い庭を何羽もの鶏が鳴きながら走り回っては

犬を横目に大手を振って餌をついばんでいた

そんなあちこちで見慣れた風景が

いつの間にかもう

思い出の中にしか存在しない


ガラスの引き戸のぴったりと閉ざされた玄関の脇に

うず高く積み上げられた古新聞と錆びた空き缶の山が

ここにもまた心配な家のあることを

ひっそりと告げている


時の止まったような町で

縦にも横にも延びすぎた生垣だけが

私の頭を越して

ただずっと歩道にまで押し寄せて来ている
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by _kyo_kyo | 2008-12-25 09:40 | | Comments(6)