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秋のススキ

大切な感情はそのままに

フラスコの液体が気化する様に

伝える術を少しずつ失って行く

存在する理由を見失ったまま

秋の穂のススキの様に

行き場を失った感情が

いつまでも揺れ続ける


穂先に羽を休める赤とんぼが

ススキと共に落日の金色に染まり行く

秋風が何度もススキを揺らすのに

赤とんぼは秋の空を泳ぐ様に

秋の穂に乗ったままの姿で
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by _kyo_kyo | 2012-09-26 16:56 | | Comments(10)

八月の雷雨

昼過ぎの空が見る見るうちに

夕暮れの様な薄闇に包まれる

何処からともなく響いて来る遠雷に

道行く人々は空を見上げ

驟雨を逃れようと心持ち足を速める


気忙しい蝉の声も遠退き

辺りを窺うような気配が漂う

やがていつしか雷鳴も消え風も凪ぎ

うだる様な暑さにすっかりぼうっとしていると

不意に天を突くような雷鳴が轟き渡り

天上から白銀の雷が振り下ろされる


何度も響き渡る雷鳴に

人々は窓を閉め建物に隠れ

ただ恐れおののき辺りを窺う

閃光が幾筋も走り 空が引き裂かれる

この雷に打ち抜かれ

この怒りに打ち倒されるのは誰


激しい雷鳴を追いかける様に

一、二分遅れて雨が地面を殴る様に降り始める

叩き付ける様な雨は益々激しさを増し

雷鳴と共に地上の生き物を脅かす


天は何をこんなに怒り狂う

こんなにも不条理な怒りをぶちまける

猛烈に鳴き続けていた蝉もすっかりなりを潜め

雀も人も蟻さえも地上からは消え失せる

自然界の前では万物はこんなにも無力だ

轟々と地下を巡る水音がマンホールの底から響き渡り

雨水は何処までも捌け口を求め

怒り狂った獣の様に暴れながら地下を彷徨う
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by _kyo_kyo | 2012-09-20 23:48 | | Comments(2)

Sさんに寄せて

あなたはどうしているのだろう

淡い瞳で夢を綴り続けていた

少女の様な心を持ち続けていた女性の

悲しみに暮れながら紡ぐ言葉はどれも繊細で

触れる傍から崩れる砂糖菓子にも似て

ああ、それはあなたの本質にもそのまま当てはまるのだろう


シャボン玉のように儚く

そよ風のようにさわやかな

そんなあなたの織り成す言葉を

またいつか読みたいと思うのだけれど

あなたはもうずっと黙して語らないまま

雨上がりの虹のように消えてしまった


またいつかあなたの詩が読めますか

湧き上る懐かしさと共に存在するこの不確かな想いを

一体何に問いかければ良いのだろう
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by _kyo_kyo | 2012-09-17 18:29 | | Comments(0)

水中花

水の中に

ふわりと漂う人工の小さな花

今の人はあのちっぽけな水中花を知るだろうか


子供の頃コップや金魚の泳ぐ硝子鉢に

ぽとりとそれを落とすと

錘の付いた小さな玩具は

水の中で見る見るうちに生き生きと葉を伸ばし

毒々しいくらいの色鮮やかな

紫や赤の花を開くのだった


水の中でゆらゆら揺れる花を見ながら

子供心にいつも疑問だった

金魚は突如生まれた模造の花をつつきながら

何と思っていることだろう

水の中に咲いた花は

金魚たちに歓迎されているのだろうか


水の中でしか咲けない花は

ゆらゆらと眺めるのも楽しみで

けれどさほど長くはない命ではあるのだけれど
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by _kyo_kyo | 2012-09-10 14:26 | | Comments(2)