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西條八十詩集 より

『書物』

月の夜は
大きな書物、
ひらきゆく
ましろき頁

人、車、
橋の櫛は
美しくならべる活字。

樹がくれの
夜の小鳥は、
ちりぼりて
黒きふり仮名。

しらじらと
ひとりし繰れば、
懐かしく、うれしく、
悲し。

月の夜は
やさしき詩集、
夢のみをかたれる詩集。


『空の羊』

黄金の小鈴を
頸にさげ
唖の羊は
群れ過ぐる。

昨日も今日も
夕月の
さむきひかりの
丘の上。

ありし日
君とうち仰ぎ
青き花のみ
咲きみちし。

空ははろばろと
わかれては
悲しき姿の
ゆきかよふ。

ちぎれて消ゆる
雲なれば
また逢う牧は
知らねども、

こよひも寂し
鈴鳴らし
空の羊ぞ
群れ過ぐる。


西條八十の詩篇より、
好きな詩を二つほど載せてみました。
物悲しい、けれどイメージの広がりが、
彼の世界の幅の広さをほんわりと思わせる詩です。

また、他にも『かなりや』、こちらは童謡でご存知の方も多いかと思いますが、
それも彼の作品で、童謡としてはちょっと異色ですよね。

「唄を忘れた金糸雀は、後の山に捨てましよか。
いえ、いえ、それはなりませぬ。



唄を忘れた金糸雀は、
象牙の船に、銀の櫂、
月夜の海に浮かべれば、
忘れた唄を思い出す。」

同じように『海のかなりや』をご存知の方はいらっしゃるでしょうか。
連作かなと思いますが、こちらは童謡にはなっていないと記憶していますが・・・
好きかと聞かれると、ちょっと・・・哀しい雰囲気の漂う唄です。
長くなりますので、またそちらは今度の機会にでも。
by _kyo_kyo | 2005-01-21 17:37 | 好きな言葉(抜粋など) | Trackback
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