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2012年 11月 25日 ( 2 )

掲載作品 其のニ

此方は私の出身地でやはり小さな賞を頂きました。
今年の秋に発表になり、掲載は授賞式の後との事でまだですが、
一括して掲載作品とさせて頂きました。
遠方なので残念ながら式は欠席です。
詩は2011年にここのブログで発表したものに、
少し手を加えて応募させて頂きました。
「図書カード」の様な大幅な変更はありませんが、
比べてみると推敲前の作品の稚拙さが目立ちました。



「棘のプリズム」


棘が刺さっていた

ただの目立たぬ棘だった

何時か抜けるだろうと

そのまま放って置いた


いつしか棘の存在など

すっかり忘れてしまった頃

棘は小さな芽を出した

何時の間にか私の中に根を張りめぐらし

小さな芽が生まれていた


朝の光を浴び 芽は葉を開き

葉は更に次の芽を生み

枝は蔦となり 

そっと絡み合い続けた


ただの棘だった

けれどしぶとく美しい棘だった

外見からは何も分からない

そんなただの棘だった


棘が蔦に姿を変えた ある寒い朝 

あたり一面に霜が降り

絡み合う蔦は

霜の中で氷の彫刻のように

朝光を浴びて輝いていた


プリズムのように

ただきらきらと輝いていた

そんな日が何時までも続くのだと思っていた

赤子に与えられた玩具のように

何時までもきらきら輝いているのだと

微塵も疑いもしなかった


プリズム色に世界を染め上げた後

棘は忽然と姿を消した

あんなにもしぶとい棘が 

何処にも存在しなくなった

隅々まで張り巡らされた根が

今は何処にも見当たらない


ただの棘だった

少し痛くて けれども強い棘だった

傷口はもう癒えたけれど

傷痕の引き攣れは

今でも鈍く光っては

霜に覆われた

蔦のプリズムを思わせる
by _kyo_kyo | 2012-11-25 18:23 | | Comments(8)

掲載作品 其の一

2012年の冬に、地元で小さな賞を頂いた作品です。
過去に掲載した時のコメントもそのままになっていますが、
詩自体は改作して、全く趣の違う作品に生まれ変わりました。


「図書カード」

分厚い本を机の上に載せ

ぱらぱらとページをめくると

遠い記憶の底から

懐かしい中学の図書室の匂いがした


あなたの閉じたページを制服の私が開く

目をつぶり、息を整え、少しだけ緊張して

みんなに何度も読み継がれ

上がくるりとめくれ上がった本は

所々剥げて今にも分解しそうなのに

「ここにいます」

ページをめくる度に魔法の言葉を囁く


何の変哲も無い本を

ことさら特別に感じさせる図書カード

あなたの後に私が借りて

私の後にあなたが借りて

本の裏表紙に挟まれたカードには

言葉を交わした事も無い

二人の名前が記されていった


何度も繰り返す偶然はまるで必然の様で

少し照れた私は

わざと違う本に手を伸ばしていた

その日を境に裏表紙のカードに

あなたの名前を見出す事も無くなり

二人の図書カードにも

同じ題名の記される事は

無くなっていったのだった


あの頃、制服の私は

若さという微熱を伴いながら

軽い胸苦しさを覚えたまま

図書室でひとり、かくれんぼをしていた

本棚から本棚へとスカートを翻しながら

夕焼けに染まる図書室の片隅で

放課後のほんのひと時

数多の本にかこまれて

私の時間が無限に輝いていた



                       
by _kyo_kyo | 2012-11-25 15:59 | | Comments(4)