人気ブログランキング |

夢見るダイヤモンド 18

事故から一週間が過ぎ、美沙の足や腕の傷は紫色の痣になり、
結構みっともない有様になったけれど、痛みの方は随分と薄れてきた。

「痣も薄れてきてるし、もう大丈夫」
美沙は自分に言い聞かせるともなく呟いた。
実はそろそろ外に出掛けたくてうずうずしていたのだ。
そして心の中に小さなほころびを感じ始めていた。

それは日常のたわいもない不満、本当に些細な事。
けれどそれが蓄積して、自分の中で抑えようもない力で押し上げてくるのを怯えながら感じ取っていた。

「いらっしゃい」
店主の笑顔は最初に会った時と変わらず穏やかでやわらかい。
彼が、婚約者の失踪という不幸に見舞われたことなど、
弘樹から聞いていなかったら、全く想像もつかなかったことだろう。

「今日はお願いがあって参りました」美沙は神妙に切り出した。
「はい?」
今日は弘樹もいないようだ。寧ろそっちの方が都合が良いかもしれない。
「柳瀬さん、唐突なんですけれど、弟子にしてもらえませんか。私、ここで修行をして、あの指輪を自分の手でリホームしてみたいんです」

ひと息に言ってから顔がかあっと熱くなった。
馬鹿なことを言っているのは十分承知のつもりだった。

恥ずかしくて柳瀬さんの顔がまともに見れない。
けれど、意に反して落ち着いた声の返事が返ってきた。
「弟子を取るほど手広くはやっていないんですが、あなただったら良いかもしれませんね」

え、、っと息をのむ。何を言われたのか理解するまでに途方もない時間が流れて行った気がした。
実際はほんの数秒の事だろうけれど・・・。
「本当に良いんですか」
言いながら何だか自分の目が泳いでいる。
「良いも何も、あなたのその熱意は本物だと感じました。実際は少し試しに彫金の基本をやって見て、
それを見てからの本採用となりますがね」
いたずらっ子の様な顔で「あんまり不器用では困りますからね」と笑っている。

「そんなとんでもないです。ダメもとで弟子入りなんて図々しい事をお願いしました。本当に何と言ったら良いやら」
感激と緊張に涙ぐむ美沙に「まだ採用と決まった訳ではないですよ」と笑っている。

本当にこんなことってあるんだろうか。
美沙は自分で言い出した事なのに、あまりにも簡単にOKが貰えてちょっと怖気づいてしまっていた。
けれどこれでOKが貰えれば、自分の中の何かが確実に変わると確信していた。
# by _kyo_kyo | 2015-10-08 22:26 | 小説 | Comments(0)

さくら、さようなら

不思議なもので、前回さくらのことを書いたのですが、
その翌日に息を引き取りました。

長くはないと分かっていたので、他の子達ほどの辛さはありませんでした。
けれど、さくらはあまり可愛がってあげれなかった思い出の方が多くて、
その思いが逆に心を締め付けます。

朝起きたら一匹で冷たくなっていたさくら。
血を吐いて苦しかっただろうけれど何もしてあげることは出来ませんでした。
それでも死ぬ直前まで、みんなの傍に居たがった様に感じます。
亡くなる日の明け方、血の付いたシーツを交換すると、
寝息が安らかになったように感じたので朝までは大丈夫かと思ったのですが、
寂しい一生だったような気がします。

どこかで心のボタンを掛け違えてしまったのでしょう。
それは私達飼い主の責任かも知れません。

さくらは娘のくりの隣に眠っています。
その日だけ雨が上がって、一日良いお天気でした。

我が家には今は一番年上のみゅうだけが残されました。
彼はこの環境に満足しているのか今まで以上にみんなにちやほやされています。

また不思議なもので、養子に出したさくらの娘も危篤との連絡を頂きました。
我が子の様に可愛がって下さっている家族なだけに、本当に心配していましたが、
治療の甲斐なく、その子もお空に帰って行きました。
小さかった時のことをさくらの姿と共に色々と思いだし、
あんなこともあった、こんなこともあったなあと、悲しい気持ちになりました。

さくら、ごめんね、そして有難う。
あなたも私にとっては大切な家族の一員だったのだよ。
そしてきっとずっと忘れないよ。
いつまでも尾をゆらゆらと振りながら甘えていたさくらファミリーの姿が、浮かんでは消えません。
さくら、愛していたよと言っても良いですか。
# by _kyo_kyo | 2015-09-18 00:57 | 雑記 | Comments(2)

小さな灯 (愛猫さくらへ)

消えようとしている小さな灯

見守る事すら容易ではなくて

私は何度も目を背けたくなる

何度も 何度も 同じ過ちを繰り返しそうになる

生きることにどんな意味があるのか

答えは何も分からないけれど

この灯を大切にしたいよ

この明かりを無駄にはしたくないよ

今はもう 見守っていることしかできなくて

それさえも今の私には容易ではなくて

それでも限りある可能性の中で

自分を見誤らない

自分の気持ちを優先させない

そう心掛けて行きたいと思う

灯よ どうか消えないでと

思う私にそう言わないだけの勇気を下さい

勇気を下さい
# by _kyo_kyo | 2015-08-26 02:58 | | Comments(0)

駆け足で時は過ぎ心は息切れがして

何故だろう駆け足で時が過ぎて行くのに

心は息切れがして少しも一緒になんて走れない


いつからこんなに引き離されてしまったのだろう

いつから時がこんなに早く過ぎる様になったのだろう

立ち止まり自分の手足を眺めてみる

脈打つ心臓の鼓動を感じてみる

目をしばたたせながら未来を見つめる

そうして、まわりを走っている人達の足音に耳を澄ます


焦る事なんてない

少しも焦る事なんてないんだと

己に言い聞かせながら再び走り出そう


その先に温かな光の見えて来ることを信じて

どんなに遅れたって良いから

ただ一心に走って行こう

ただ走って行こう
# by _kyo_kyo | 2015-08-04 01:10 | | Comments(0)

親友O

急に古い友の顔が浮かぶ

懐かしい顔が私に向かって何かを語りかけている

あなたは今何処に


あれから何年経ったことだろう

あなたは何処にも見当たらず

私は遠にあなたを探すことを諦めてしまった


あなたのいた毎日は光り輝いていたけれど

あなたが去って私の半身は欠けてしまった

黄金の様な日々は急激にくすみ始め

退屈な毎日が時を刻み始めた


私は心の落ちて行く自分に気が付かないまま

あなたのいない毎日に慣れたつもりになっていたけれど

心は知らぬうちに寂しさを学んでいた


孤独という言葉が何より嫌いで

一人ぼっちという言葉はもっと嫌で

けれどあなたを無くした感情を

なんと言い表したら良いだろう


銀杏の並木を歩く私の足元で銀杏が割れ

青い匂いが鼻をくすぐる

あなたとこんな思い出は共有出来なかった

一人歩く足元で枯葉が囁く

あなたは元気でいるだろうか


あなたはまさに私の太陽のような友だった

もはや時は過ぎ去り

二人を埋める時間の持たれることはないけれど

何処かにいるあなたの幸せを願おう

誰よりも優しかったあなただから

これからもずっとくすまない幸せを願っていよう
# by _kyo_kyo | 2015-07-05 03:31 | | Comments(0)

過去から未来へ続く

閉じた目の裏に踊る柔らかな髪の毛

くるくると指先に絡まり続ける

穏やかで柔らかな世界

こんな世界がずっと続くと信じていた


世界にぽっかり空いた穴を見上げる子供たち

あの穴から天使は降りてこない

子供たちはとっくにそんなことは知っている

それなのに今も何を見つめているのだろう


子供の頃は

テレビがモノクロからカラーに変化したように

世界も色鮮やかでかっこ良くなると信じていた

子供心に抱え込めない程のもやもやに

自問自答しては自己嫌悪にまみれ

悔し涙を流さない夜は無く

それでもテレビの世界が鮮やかに煌めいたように

世の中はもっと美しくなると信じていた


髪の毛はくるくると踊りながら

絡まり続けてまだ指先からほどけない

目蓋の裏には今も柔らかな夢みがちの世界


あの穴から天使は降りては来なくても

違うものが下りて来るかも知れない

それはもしかしたら宇宙人かもしれない

未知への期待に胸をいっぱいにして

子供たちは今も何かを待ち続けている


そこには未知への不安がつきまとうけれど

それにも増して惹きつけて止まぬ強き憧れよ

世界はまるで銀色の鱗雲に覆われた

巨大な宇宙船のように浮かんでいる


     参加作品

# by _kyo_kyo | 2015-07-01 03:17 | | Comments(0)

粘土のような

粘土のように

手のひらで捏ねたり

ちぎってはくっつけて

形を変えながら更に新しい形を模索する


人も変わるね

粘土のように失敗しても

何度でも作り直せたなら

もっと良い人になれたかな


言葉が具現化するならば

思いっきり叫ぶことも可能だろうし

言葉の粘土を捏ねまわし

新しい自分を探し出そう


もしも言葉に影があるならば

ぐるぐると揺らめきながら

一斉にぶわっと吹き出していく様が見えるかい


それは地球を回っている

まるで小宇宙の様に恒久的に
# by _kyo_kyo | 2015-06-24 03:10 | | Comments(2)

Yuki Kajiura LIVE Vol.#12 “7 days  梶浦由記ライブ

娘に連れられて、半ば無理やり6月13日の東京公演に参加しました。
新幹線で着いてそのままお昼からサウンドトラックのライブを聞いて、
夜は日本語オンリーのライブに参加して新幹線でトンボ返り。
翌日朝から(4時半起床)仕事がなかったら、
もうちょっとゆっくりできたのにと悔いの多い旅でした。

サウンドトラックでは意識が飛んでました・・・(汗)
一生懸命聴いているのですが、気が付くと場面が変わっている・・・
でも笠原さんの登場で眠気も一気に覚め、鳥肌ものでした。
でも楽器隊を半分くらいしか楽しめなかったのは本当に残念・・・・
アコーディオンの佐藤さんにもまた会えたし、
しかしイメージ変わってたなあ・・・真面目を絵に描いたような方だったので、
今回は髪が茶髪にメガネをしてない!全くの別人かと思いました。
前の佐藤さんも結構好きだったんだけどなあ。
イーリアンパイプの演奏は可愛らしい御嬢さんで、
その不思議な音はとても興味深かったのですが、
本当に東京公演は半分以上死んでました!
パーカッションのオバヲさん、面白い方が現れましたねえ。
死にそうな私の魂に一縷の光が(謎)

日本語ではなじみのある歌が多く、安心感もあり、ついうとうと・・・
いえいえ、ちゃんと目を見開いて聞いていましたとも。
See-Sawの「エッジ」KEIKOさんバージョンがカッコ良かった。
これは是非音源化してもらいたい、
というか今のメンバーでSee-Sawのリメイクとか絶対CDにして貰いたい。

そして気が付くと数秒ずつワープしてたかもしれない・・・
心地良い歌声に包まれて天国のよう・・・
梶浦さん、本当にごめんなさい。

続く翌週の大阪公演、私は体調や仕事の事もあり、
東京公演の参加からかなり迷っていました。

それでも大阪は二日間、三公演全てが聞けるとのことで、
東京に引き続き、痛む胃をかばいつつ、風邪に悩まされつつ、
初日の20日は日本語オンリーで、私的にはハードルが低くて助かりました。
それに皆さんの歌唱力の高い事といったら・・・今までで多分一番感動でした。

大阪へ行ったのは初めてだったのですが、NHKホールしか見ないで終わりました!
NHKから大阪城のライトアップも見えたなあ・・・
折角の大阪なのに、と思いましたが、21日には親子で御揃いのTシャツを着て参加。
梶浦さんのTシャツを着て参加するのは私は初めてじゃないかしらん。

サウンドトラックも二度目ということもあって余裕をもって楽しめました。
ただ、再び笠原さんの登場は思ってもいなかったので、
これには本当に感激でした。
天使のような美声に迫力のある演技力、全てが素晴らし過ぎです。
ただ曲名を知らない私としては色々な意味で勿体ないことをしていましたね。

そして日本語封印、これはもう圧巻でした。
娘にも言われたけれど、私に一番向いているそうです。
全身で好きがいっぱい!サントラの笠原さんや、戸丸さんの歌声を聞いていて思ったけれど、
あんな天使な声をしていたらもうそれだけで生きていて幸せすぎるでしょう!
同じくゲストのレミさん、以前にもすごく歌の上手い方、という認識はあったのですが、
びっくりしてひっくり返りそうでした!
自分の表現力の無さが残念過ぎですが、
こんなに上手くなっているなんて、なんて人間って素晴しいんだろう!

FJのライブにはコーラスも定番のメンバーが決まっています。
高音のWAKANAさん、梶浦音楽のコーラスをずっと支えてきた貝田さん、
低音担当のKEIKOさん、音域的にアルトかなと思われるKAORIさん、
この4人で構成されています。
4人の素晴らしいハーモニーは回を重ねるにつれどんどん進化していく様で、
まだまだこれからがとても楽しみです。

貝田さんはいつもと変わらぬ安定感と透明感のある天使の声で、
居てくれるだけでもう安心、と思える存在。
WAKANAさんは、その綺麗な容姿とは裏腹に、
いつも突拍子もないトークで場を和ませます。
KEIKOさんは責任感の強い人というイメージ。
低音の凄味は益々冴えわたっていました。

そして今回一番驚いたのはKAORIさんの表現力の豊かさ。
ソロライブで場数を踏んで自信を付けたのでは、という感じがしました。
それくらい堂々たる歌姫ぷりでしたし、ソロ歌手としての強い個性を感じました。
もともと好きな声の歌い手さんだっただけに、
彼女の今後の化け方次第でFictionJunctionが更に良い方に導かれたならと思います。

最後になってしまいましたが、楽器隊について一言。
フルートの赤木さん、
天才とはこんな凄い人なんだろうか・・・
フルートってこんな物凄い格闘技だったのねと、あらためて思いました。

そしてバイオリンの今野さん、
いつも陰にいる方がサントラスペシャルディーでは中心にいるではないですか(笑)
いつもとあまりにも違う立ち位置に、すっごい違和感が。
でもって、延々と弾き続ける大変さは、ご本人にしか分からない事でしょうが、
何だろう、すごい気迫と研ぎ澄まされた技術の融合を見る(聞く)思いでした。

ギターの是永さん、ベースのjrさん、ドラムの強様の健在っぷりもやっぱりすごいし、
ほのぼのだし、キーボードの梶浦さんの笑顔を囲んで、
この楽器隊はやっぱり良いなあ。。
# by _kyo_kyo | 2015-06-23 22:59 | 雑記 | Comments(0)

石ころみたいな夢

そこらじゅうに転がった

石ころみたいな夢だから

Tシャツの裾でごしごしと拭いて

ポケットにつっこんだまますっかり忘れていたの


痛い事は嫌で

辛い事は嫌い

面倒な事もうんざりよ

暑い日差しに当たれば汗と一緒に愚痴が出て

寒い風に吹かれれば凍えた手を震わせながらふくれっ面


あなたはどこにいったの

私の優しい夢達よ

もうポケットからは出てきてはくれないの

そうね 私もマジシャンじゃないし

ポケットのある服も着ていない

それならそれでも良いと思っていたの


でもそれは自分への言い訳ね

今の自分に満足できない自分への言い訳

そしてそれは

夢を何処かへ置き忘れてしまった

自分への言い訳


言い訳を口にした瞬間

本当はそう気が付いていたよ

でもやっぱり辛いのは嫌で

本音は楽したがっていて

怠け者万歳!なんて思っちゃう


でもね

それじゃいけないんだって何かが訴えるんだ

楽な自分は決してより良い自分には辿り着けないって

何かが言うんだ


多分 それが夢ってやつなんだよ

お節介で出しゃばりで

でもすごく優しい奴

忘れてしまっても

きっと何処かで見守ってくれている

それがきっと

地味で石ころみたいな

だけど何よりも大切な

夢ってものなんだよね
# by _kyo_kyo | 2015-06-22 04:12 | | Comments(0)

天使が

天使が舞い降りてきて

幸福な朝の訪れを告げる

でもそれは君のものでは無くて

誰か知らない他の人のもの


朝日の眩しさに含まれる

痛みを知るようになって

どれだけ経ったのだろう

日差しは明るく世界は輝いていて

でも心はどろどろに溶けて

粘土のように崩れて行く


いつかあの朝にめぐり合えたなら

またあの朝を迎えることができたなら

この心にも天使が点るだろうか

まるで小さなランプのように

心にも灯が点るのだろうか


まだ朝日は眩しくて

君の心に灯は点らない

けれど何時かめぐり合える朝を信じて

生き続けて行こうと思う

生きていたいと思うだけ
# by _kyo_kyo | 2015-06-22 01:49 | | Comments(0)